新書「ジブリの仲間たち」
著者:鈴木敏夫
出版社:新潮社
学生時代、私はアニメに魅了され、よく「アニメージュ」を購入して読みふけっていました。アニメ愛好家は当時、「オタク」と揶揄され、ファンとしては肩身が狭い思いをしていたものです。しかし、「アニメージュ」は本格的なアニメ雑誌で、その世界に真剣に向き合う場所でした。ここでは、宮崎駿が「ナウシカ」を連載し、高畑勲や大塚康生、富野由悠季といったアニメ界の巨匠たちが取材記事が毎号毎号特集されていました。アニメの設定集やセル原画もふんだんに掲載されていて、ヒット作アニメの製作の裏側や、監督たちの率直なトークが掲載されていたのです。
その「アニメージュ」の編集長であり、スタジオジブリの立ち上げにも関わったのが、鈴木敏夫(以下鈴木Pさん)です。彼の映画宣伝の仕事について深く知ることができるのが、「ジブリの仲間たち」という本。この本は、映画宣伝に特化した内容で、鈴木Pがジブリの設立に携わった元雑誌編集者としての経験が活かされています
「ジブリの仲間たち」を読んで、鈴木Pの映画宣伝の仕事についての理解が深まりました。この本は、映画宣伝に特化した内容で、鈴木Pさんがジブリの立ち上げに携わった元雑誌編集者としての経験が活かされています。
彼は宮崎駿や高畑勲のような才能あるが手強い作家たちとの対話に気を配りながら、それぞれの作家性を尊重し、保護してきました。彼の映画宣伝へのアプローチは、試行錯誤を重ねながら独自のスタイルを確立しています。鈴木Pさんの頭の中には、映画宣伝の公式がすでに完成しているんですね。
ただ、鈴木Pさんは頑固に固執するのではなく、映画会社や広告会社と連携を取りつつ、作家たちの考えを慎重に取り入れています。彼の宣伝方法は、商業主義だけに留まらないんです。本の中で、鈴木Pさんは仲間との仕事を本当に楽しんでいると感じられます。鈴木Pさんは、自分と同じくらい映画宣伝に関わる仲間たちについて何度も言及しています。
時代に合わせてSNSやシネコンを使った宣伝手法を適切に選んでいる点も注目です。映画宣伝の成功は、予定していた興行収入を上回れば成功、下回れば失敗と冷静に見ています。成績が悪くても、彼はそれを想定内として、冷静に整理し、次へのステップを考えています。
鈴木Pさんは宣伝のプロフェッショナルでありながら、作家の魂を大切にしながら、商業主義に陥らずにジブリ作品を世に送り出してきました。彼が生み出した「宣伝をしない宣伝」というユニークな方法も、この本で学ぶことができます。

映画プロデューサーのイメージ/生成AIによるイラスト(本文とは関係ありません)
鈴木Pさんは最後に、「もう大ヒットを生み出す映画はできない」と述べています。シネコンやデジタル映像がネットに溢れる現代において、かつてのジブリ作品のように映画がヒットすることは難しいと、彼は冷静に捉えています。
結局、鈴木Pさんは自分で作り上げた映画宣伝の公式を更新することなく、映画宣伝、プロデューサーとしての仕事を楽しみながら、その時代、年代における自分の役割を冷静に見つめています。プロデューサーは、作家として、世の中にその時代に必要なメッセージを発信することが役割なんだと、この本を読んで理解しました。
鈴木Pさんはプロデューサーでありながら、映画宣伝という芸術を生み出した作家なのかもしれません。
この本を読めば、映画宣伝という仕事の中に潜む鈴木Pの魅力や、ジブリ映画の素晴らしさに気づくことができるでしょう。映画や宣伝に興味がある方は、ぜひ一読をおすすめします。
最後まで読んでいただいて感謝です。では楽しんで!
